第58章 大正“浪漫”ー拾ー
やってしまった。
私はいたって冷静だった。
お館様の屋敷に直行し、ずらりと柱が並ぶなか一人つるしあげられたように皆より一歩出たところに座らされた。
刀も置いて、ガラスが私の肩にとまっていた。
「…久しぶりだね、。」
お館様が声をかけられたので、頭を下げた。
「怪我はないかい、大丈夫かな?」
怒りもせずにそう言った。
私は右肩をおさえた。怪我…怪我は、霧雨家の洋館で…鬼に右肩をやられたぐらい。血は止まった。包帯も……。
「………」
……あぁ、氷雨くんや安城殿ははこういうところが嫌いだったのかもしれないな。
どこまでもお優しくて、私達を想ってくれる。
……お館様はずっとそうなのだろう。だから許せなかったのかもしれない。お館様の感情は読めない。私も感じることができない。ただただ一定だ。
どんなに守りたくても、可愛いと思っていた童も、お役目のために身を粉にして我々のために働きかけてくれる。
それに反発したとて、お館様のお役目が変わるわけでもないのに、あの二人はそうすることしかできなかったのかもしれない。
桜くんも察していたのかもしれない。けれど、あの子は何も言わなかった。私のように。
「……はは」
私は怪我とそのことを考えていて、あることを思い付いて笑ってしまった。
後ろの柱達がどよめく。
「刀か」
私は新しい刀にポン、と手を置いた。
私が霧雨家の洋館で刀を折った。折れた刀身は回収できなかった。が、それを鬼殺隊が見つけたのだろう。
「崩壊した洋館から、隠が見つけた日輪刀が君のものだと判明した。折れた刀身と聞いて、心配していたんだよ。」
「………。」
私はとんだ失態を犯したらしい。
まさか折れた刀で見つかるとは、思っていなかった。