第58章 大正“浪漫”ー拾ー
朝が来た。
今日も一日が始まる。
誰が死んでも、生きても、太陽は昇る。
鬼と闘う我々にとってそれは救いであり、また、残酷なまでの真実であった。
「…安城殿のお墓……綺麗だったな……」
誰が来ていたのだろう。色んな人の人望があったから、きっとたくさんの人が参っているんだろうな。
「………」
私はかつての仲間を思い出しながら朝日を見上げた。
(…眩しすぎる)
私は山道をテクテクと歩いた。
刀をさして街中を堂々と歩けないので、人のいない道をひたすら歩いた。幸い気配でだいたいのものは感知できる。
いつかのようにまた私はひたすら走った。
自由に、ただひたすら。
そうして一日がたった。また一日がたった。
鬼殺隊を離れて七日目の朝だった。
私は立ち止まった。疲れてはいなかった。
気配を感じたからだ。
上空を見上げた。
今日で一週間。そろそろかと思っていた。
「大馬鹿野郎!!」
空から舞い降りた烏は偉そうに叫んだ。
「処罰はまぬがれない、お前が悪い俺は悪くない」
ガラスは羽をバタバタさせて怒っていた。
私は何となく察していたので何も言い返さなかった。
「帰るぞ」
ガラスが言った。
私は立ち止まったままだった。
「帰らないなら柱を呼ぶぞ」
ガラスが私をつついた。
「………」
前世の私もそうだった。
ガラスに怒られた。屋敷に帰りもせずぶらぶらしてたからだ。それに、鬼殺隊と連絡を絶ったから引き戻された。
けれどここまで怒っていなかったような………。