第57章 大正“浪漫”ー玖ー
アマモリくんと随分話し込んだ。朝に押し掛けて帰るときには日が沈みそうだった。
「で?自分のこと知りたいキリキリちゃんは次どこに行くん?」
「………どうしよう。仲間のお墓でも参ろうかな。」
私が言うと、アマモリくんは眉を下げた。
「鬼殺隊には、戻らへんの?」
私は笑って答えた。
「一人“が”いいの。」
鬼殺隊には思い出はある。けれど、私は受け入れられていない。私は罪を犯した時点で組織に入って良いような人間ではなかった。
過去の仲間達が招き入れてくれた。
「もう…誰もいないから……。」
一人残らず、死に、引退した。
「キリキリちゃん。」
アマモリくんは何かを悟ったように言った。
「いつでも!いつでも来てええから!俺はキリキリちゃん大好きやで!!」
「ありがとう」
私は笑った。
「アマモリくん、ありがとう。私も大好きよ。」
「…はは」
アマモリくんは弱々しく笑った。
「いつでも…いつでもおいでや……。」
それを最後に、彼と別れた。
彼の着流しの帯に刺さった風車がカラカラと回る音がした。