第57章 大正“浪漫”ー玖ー
「そんで、えらい珍妙な格好しとるけど何でなん??」
珍妙…確かにそうだろう。こんなにボロボロで汚れた人間珍しい。
「それがですね…。」
やりたいことがあったから鬼殺隊を勝手に抜けた…。と、これまでのことをかなりオブラートに包んで話せばまたゲラゲラと笑って終いにはむせた。
「嘘やん!!そんなおもろいことなってんならなんで俺に一筆したためてくれへんかったん!!全力でからかったのに!!」
「だからですよわかってます?」
「いやー、笑た。そんで鬼殺隊抜けてまでやりたいことって何?」
そう聞かれてどう答えたら良いか迷った。しかしアマモリくんは非公式の刀鍛冶。…まあいいか、話しても。
「私について調べていました。」
「へ?」
「私が何者なのか…ということを。」
アマモリくんは首をかしげる。
「嫌やなあ、キリキリちゃんはキリキリちゃんやんかぁ。」
「…まあ…そうなのですけど。」
「……んで?何かわかった?」
アマモリくんがふあ、と欠伸をしながら言う。
「私、産屋敷の血が混じっているようなんです。」
「ぶっ。」
彼は盛大に吹き出した。
「え?は?何て?」
「稀有なことですよね。」
「稀有っちゅーか…。はぁ、えらいことやな。」
そしてアマモリくんは続けた。
「それ、知ってどうするん?」
私は固まった。
………確かに。
「………」
私は考えながら答えた。
「…それでも、私は知っておくべきだった……」
霧雨阿国。
そして自分のこと。
前世で黒死牟が何度も呼んだその名を。亡霊とまで呼んだ私のことを。
「…?何で過去形?」
アマモリくんはまた首をかしげる。
今度こそ答えられなかった。