第57章 大正“浪漫”ー玖ー
私はじっと刀を見つめた。
落ちてくる瓦礫を斬って斬って斬りまくった。だから私は生きているわけだが。
「まずいねぇ…」
刀が真っ二つに折れた。
とりあえずがむしゃらだったので途中で折れてしまったのだ。
荷物をそっちのけで闘っていたので、瓦礫の下からこれを探すのも時間がかかった。
刀が折れた以上、行かねばならない所がある。
私はため息をついて歩きだした。
「あっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!!!!」
アマモリくんは豪快に床をバンバン叩いて笑った。ぶん殴ってやろうかしら。
「鬼やのうて!?鬼のせいやのうて!?何ちゅーことで折っとんねん!!がははははッ、ゴホッ、ひいー!!」
終いにはむせだした。
アマモリくんは怒らない。刀を折っても怒らない。折れる刀を打つ方が悪いと、いつも私を笑って出迎える。
「いや、笑わせてもろたわ。」
「…笑わせに来たんじゃないんですけどね…?」
「うんうん、修理やろー。まあここまでぽっきりいってんなら新しいのあげるわ。」
アマモリくんはやる気がある時に一気に刀を打ってあとはゴロゴロしてる変わり者だ。
それに、同じ刀しか打たない。人に合わせるんじゃなくて、人が刀に合わせろとでも言わんばかりに。
「あの、抜刀しにくいので引っかけみたいなのなくしてほしいんですけど。」
「お客様の要望は聞きまへん。キリキリちゃん突っ走るんやから引っかけあって丁度ええやろ。」
そう言われてぐうの音も出なかった。