第57章 大正“浪漫”ー玖ー
珠世さんと愈史郎さんと少し話し合った。
私が鬼になったあとのことについて。
「霧雨さん、桜さんの薬は正しく完全なものでした。しかしまだわかりません。どうなるかは私からも…。」
「わかっています。ですが、薬に殺されても私は誰も恨みません。」
そして、私は話を変えようと切り出した。
「すみません、珠世さんに聞きたいことがあるのですが…」
「何ですか?」
「……霧雨阿国、という名前をご存知ないでしょうか。」
珠世さんに年齢を聞いたことがあった。計算すれば、それは戦国時代と重なる。つまりは…彼女のいた時代と同じなのだ。
「…!なぜあなたがその名を…」
「桜くんの遺書にありました。」
「………。」
珠世さんが絶句する。
私はじっと話を聞く体制になった。
「……風の噂程度のことしか私にはわかりませんが…。」
珠世さんは話してくれた。
「鬼殺隊の…初代霞柱の方です。」
「!やはり…」
「………始まりの呼吸の剣士と親密な方だったと…」
その後、しばらく当時のことを話してくれた。私はその全てを一言一句漏らさずに記憶した。
話し終えた後、そのことしか知らないと、申し訳なさそうに言う珠世さんに私は礼を言った。
…やはり彼女は知っていた。これで桜くんのあの遺書は正しいと断定できた。
私はにこりと笑って二人に頭を下げた。
「それでは、今回はこれで失礼します。ありがとうございました。また会えるかわかりませんが。」
「ええ…お気をつけて。」
「ふん。」
二人に手を振って、私はその場をあとにした。