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キメツ学園ー未来編【鬼滅の刃】

第56章 大正“浪漫”ー捌ー


家がないというのは自由で良い。どこへ行くも何するも自由だ。

眠らなくなって、まともにご飯を食べなくなって私はようやく気づいた。


眠たくならない。

私は自分の体を見下ろした。


『鬼は眠らないんだ。不眠不休で四六時中動けたら薬のこと疑いな。』

 
桜くんが生前教えてくれたことを思い出す。
……ならば、やはり…私は。

鬼になりつつある。

それを理解し、空を見上げた。眩しいこの太陽を見れるのもあとわずかだ。











































私が立ち止まったのは自然豊かな山中だった。


道の真ん中に、小さな女の子がいた。

おかっぱ頭の女の子で、うずくまっていた。


「何をしているの?」


思わず声をかけた。

女の子は顔をあげて、涙でいっぱいの目を私に向けた。


「う、…ぁ……」


女の子は言葉を発することはなく、ただ目の前を指さした。
そこには野犬がいた。体が大きく、なかなかに狂暴そう。


「……怖いの?」


私が尋ねると、女の子は頷いた。

野犬は今にも飛びかかって来そうだった。


「退きなさい」


私が殺気をこめて言うと、野犬はしっぽをたらして情けなく草木の茂みの向こうへ去っていった。


「ぁ…」

「もう大丈夫ね。帰れる?」


女の子は首を横に振った。


「あ、あのね、たてないの」

「……」

「転んじゃったの…」


女の子は真っ赤な左膝を私に見せた。犬から逃げて転んでしまい、それで動けずにうずくまっていたんだろう。

私は鞄から水筒を取り出した。中身は綺麗な水なので、それを手拭いに染み込ませた。


「少し痛いけど、我慢するのよ。私にしがみついていいからね。」


私が濡れた手拭いで傷口をふくと、女の子はぎゅっと私にしがみついた。それでも痛いと言わず泣かずに耐えていた。

綺麗になった傷口の上から包帯を巻いてやる。…手当て道具一式持っていて良かった。


「はい、おしまい。これで大丈夫ですよ。」


私が言うと、女の子は今にも泣きそうな顔で頷いた。
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