第33章 風邪
春風さんとは、氷雨春風。つまりはわたしの従兄弟である。
「お邪魔しま~す」
平日の朝早くからマンションを尋ねてきた春風さんを実弥は出迎えた。マスクもして対策万全である。
私はというと、ソファの上で死んでいる。
「さ…38度3分……」
おかしい。めっちゃ熱悪化したんだけど。
「さん大丈夫ですか」
「…はい」
「嘘おっしゃい。私の家に行ってから病院行きますよ。」
春風さんはポンポンと私の頭を撫でた。
…え?彼氏?彼氏なの?
「すんません、頼みます」
「はいは~いお任せあれ!」
あ、私の彼氏は実弥でした。えへへ。
「は、春風さん…仕事道具持ち込んで良いですか…」
「いいですけど、あなた仕事をするおつもりで?」
「簡易的なものだけ…何かあると困るので…」
昨日から用意していてよかった。ふらふらしながら荷物を持って春風さんの後ろをついていく。
「そ、それじゃあ……色々頼んだよ…家事はいいから仕事して…」
「はやく行け」
「にゃん」
「春風さん実弥とおはぎが冷たい」
「はいよしよし」
さすがにくっつけもせず、エアーよしよしで流された。
「じゃあ、行ってきます…」
「ん」
ドアが閉まる直前に。
「ゆっくり休めよ」
その頃には、ドアが閉まっていて。
私はハアーとため息をはいた。
「うっ…好き…ッ!!」
「あなた相当熱にやられてますね。はやく行きますよ。」
春風さんが私の荷物を持ち、歩きだすのでふらふらしながらついていった。