• テキストサイズ

その秘密は図書室にて

第3章 歪んだ関係


放課後、教室には瑞希と由香里の2人だけが残っていた。
「由香里、昨日のことなんだけど…」
「その話ならもういいよ」
由香里は顔を背ける。大丈夫だから…と言うが、表情は曇ったままだ。
「よくないよ…」
瑞希の声に由香里がぴくっと反応する。
「よくない。由香里が困ってるのに私はなんにも出来てない」
「…瑞希には関係ないでしょ」
「関係なくない!!」
由香里が驚いた顔で瑞希を見る。瑞希はそのまま続ける。
「そりゃ確かに私は由香里のこと何にも知らないかもしれないよ。一宮くんとだって何があったか知らない。けどね」
由香里を真っ直ぐ見る。
「私は由香里のこと友達だと思ってる。だから関係なくはないの」
それまで固まったまま聞いていた由香里が、ふっと笑みをこぼした。
「そうだね、ごめん。瑞希をもうちょっと頼ればよかったね。私も瑞希は友達だと思ってるから」
そう言うとすっと瑞希を見た。
「私、小さい頃から瞬と幼馴染でね、よく一緒に遊んでたりしたの」
由香里が懐かしむように目を細める。
「幼稚園から小学校まで一緒で、家が近いこともあって仲も良かったの。実は付き合ってるんじゃないかって噂が立つぐらい。でもね」
由香里はそう言葉を切ると俯く。
「5年生のとき、すごい大ゲンカしちゃって。私思いっきり瞬に『大っ嫌い』とかなんとか言っちゃったのね」
「大ゲンカ?」
「うん、言ってからすごい後悔したけどね。瞬の顔みて。はっきり、瞬を傷付けたんだと思った。
それから、瞬とはずっと話してないし、話すことも出来ない」
由香里と目があう。
「あの時、瞬をもっと頼れば良かったのかもしれない。…今の瑞希みたいに」
ありがとう。由香里はそう呟いた。
/ 46ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp