第7章 空白と決意
少女は閉じていた瞼を開く。
大きな木に背中をあずけ、草花の茂る根元へ座っていた。
1人ではない。隣には顔を真っ黒に塗りつぶされた誰か。
どんなに顔を覗き込もうとも、あと少しのところで顔が見えず、なんとも言えないじれったさがある。
あぁ、またこの夢だ。
少女は頭では理解していたものの、夢独特の体の重さを感じていた。
この人は誰だろう。
夢の自分はいつも楽しそうなのに、その人はどこか淋しそうに笑う。
ーねぇ、あなたは誰?ー
声にならない声で呼ぶ。
すると誰かさんは、ゆっくりと立ち上がるとそこから離れて行く。
口をどんなに動かしても、パクパクと空気を含むだけ。
ねえ!
いやだ!
待って!
教えてほしいの。
必死になって立ち上がり、走って追いかけるのに全く前には進まず追いつけない。
「お願い待って!どうしていつも悲しそうなの?あなたは誰?顔を見せてよ!」
ようやく出た声は誰かさんに届いたようで、〝彼〟はゆっくりと振り返り笑った。
ー……こう。……く。…る。…ー
手を伸ばしても届かない。
彼がまた前を向いて歩き出すと同時に少女が座る足場は崩れ落ち、先程まで動いていた足はまた石になった。
そして〝リア〟は暗闇に落ちていった。