第7章 空白と決意
そうだ。俺はこの笑顔が見たかったんだ。
あの日もこの笑顔が見たくて連れ出した。
あの日からもずっとそうだ。
リヴァイは心から何か湧き上がるものがあり、それをぶつけるように思いきりリアを抱きしめた。
リアは突然のことに驚いて目をパチパチとさせているが、
そんなこと知ったこっちゃねえ。
やっと触れられた。
リヴァイが強く、強く腕に力を込める。
「リア、あの「はじめまして。」」
時間の流れが止まったような気がした。
やはりリアは思い出してなんかいなかった。
なんで。なんでだよ。
この湧き上がってくる感情が怒りなのか絶望なのかわからない。
その時再び扉が開いた。
「何をしている。」
低音の冷たい声が響く。
リヴァイは構わずリアを抱きしめ続けると、入ってきたエルヴィンを見上げ睨みつけた。
リアは抱きしめられたままちょうど扉に背を向けており、様子が分からないのかしばらくキョトンとして座っていたが、突然またぶつぶつと呟き始めた。
「あ…あぁ。いやだ。いやだよ。怖いね。こわいの。ぜんぶ、ぜんぶなくなっちゃう。」
リヴァイがリアの顔を見よう腕から離すと、エルヴィンはすぐに長い腕を伸ばしてリアを抱き上げる。
「どうしたんだい。怖いのかい?」
「なにもわからないの…。いやなの。」
エルヴィンはポロポロと涙を流すリアと目を合わせると優しくほほえんだ。
「もう思い出さなくていいよ。君が苦しむならば忘れたままでいい。少し眠ろう。」
思い出させて元通りを望んだリヴァイを横目に、エルヴィンは全て忘れる事を願ってリアをベッドへ寝かせた。
「おやすみ、リア」
エルヴィンがそう声をかけると、リアは小さく寝息をたて始めた。