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追憶【レイトン教授】

第9章 【魔人の笛】第五章――魔女の凄む家――







湖畔を後にしたレイトンたちは、ルークに尋ねた。
彼等は何を恐れているのか。
ずっと黙秘しているわけにもいかない。
ルークは静かに口を開いた。

彼らが恐れているもの。
それは『魔人』の存在。
魔人は町を壊す以上に強大な力を持っているとルークは言う。

「それってなんなの?」
「魔人の力は人の心をむしばんでいきます。まるで何かに取りつかれたように変わっていく……。きっと、これも魔人が持つ魔力なんです」

魔人はどこかで住人たちの会話を聞いている。
大人たちはそれにより魔人の手下になっている。
ルークは続けてそう言った。

にわかに信じがたい話だった。
だがルークは、自分の父親もまた魔人の力によって手下になったと思っている。
レイトンとは何かを考えるように黙り込んだ。
彼らの知っている、クラーク・トライトンの様子は確かにどこか様子が違っていた。
もしそれが本当だとするのならば……。

「レイトンさん、あなたはボクの期待した通りの人でした。ボクは誰かに……この町の大人ではない誰かに助けてほしかった。魔人も……厄災の魔女も……全部、あの日から始まったんです……」

それは一年前のこと。
ユラの父、アランバード氏が亡くなった時から始まった。

アランバードが亡くなった。
その連絡を受けたユラは急いでその場所へと向かった。
遺体には布が被せられていたが、それが自身の父親だと確認できたのは、警察がその名前を何度も口にしたからだ。

「なんでパパ……私たちを置いて死んじゃうの?そんなのないよ」

まだ幼いユラには受け入れることができなかった。
母も亡くし、父親も亡くなった。
その事実はユラにとってあまりにもショックなことで、絶望が彼女を襲った。

「自業自得だ」
「いい気味だ」
「助かったぜ」
「ざまあみろ」
「これでお金取られなくてすむ」

野次馬の言葉たちがユラを壊していく。
耳を塞ぎ目を固く閉じ、その場にしゃがみ込むユラ。
そんな彼女の姿を見ていられなくなったルークは声をかけた。

「ユラ、ボクたち友達でしょ?キミは、ひとりぼっちじゃないよ」

しかしそんなルークの言葉も今のユラには無意味だった。





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