第9章 【魔人の笛】第五章――魔女の凄む家――
厄災の魔女の正体がデムスということに驚きを隠せないユラ。
一体どういうことなのか。
「魔女の呪い。ユラを悪く言った者に災いが降りかかるのはなぜか?そのナゾはとても簡単なものだったよ」
「え?」
はユラの側に寄り、レイトンと共にこの一連のナゾを解明していく。
庭師のデムスは、ユラの悪口を言った者の名前を書き留めて家の中に忍び込んで仕返しをした。
『魔女の印』を残して。
この不可解な現象を町の人たちは魔女の呪いだとウワサするようになった。
ユラが魔女と呼ばれるようになった原因は『魔女の呪い』を作りだしたデムスだということだ。
デムスは否定することもなくただ、うつむいていた。
「デムスさん、いくらご主人様のためとはいえ、なんて大人げないことを!」
「それは仕方ないさ、レミ。彼は大人ではないからね」
はゆっくりとデムスに近づくと、被っている帽子と白髭をゆっくりと外した。
その下からは、栗色の髪の毛をした少年の姿が。
ユラの弟、トニーが固く結んだ口を解いた。
「姉ちゃんの悪口を言うやつなんか、ゆるせなかったんだ……」
それは姉のことを想う純粋な気持ち。
ユラの事が大好きだからこその行動だった。
「教授、さん。いつから気が付いていたんですか?」
「屋敷の中には、ユラともう一人の男の子がふたりで映っている写真がたくさんあった。しかし、彼の姿は見当たらなかった。彼の存在を指し示す痕跡が数多く残っているというのにね」
「自分は市場で話を聞いてたあたりからだよ。それまでは全然見当もしていなかった」
レイトンさんには敵わないな、と呟く彼女にレミは深くため息を吐いた。
彼女は自分のスペックの高さに気が付いていない。
そのことにやきもきしてしまうからだ。
「すみません。弟が町の人たちにご迷惑を……。私たちは町に関わらず生きていくと決めたのに……」
頑なに町の人たちと関わろうとしないユラ。
魔人の笛について訊いても知らなと答える。
は、彼ら姉弟が何かを隠していると感じ口を開きかけた時、ルークが先に発していた。
「君も……なにかを恐れている」
「えっ!?」
これ以上詮索するなと言わんばかりに帰ってくれと懇願するユラ。
彼等は一旦この場から離れることにした。