第5章 ユニークなトランプ達は踊る
リドルは、ふと気が付いた。
さきほどまで楽しげに笑っていたオーロラの表情が、陰ってしまっている事に。
「オーロラ?どうかしたのかい?」
リドルがそう声をかけると、皆んなが彼女の方を見る。
突然自分に集まった8つの目に、戸惑うオーロラ。
『あ、その…。大した事じゃないんだけど…
トレイが、敬語になってるなって…思って』
名指しされたトレイは、自分を指差しして首をかしげる。
たしかに、彼は初めてオーロラに会った時は敬語を使っていない。
しかしそれは、彼女が王女だと知らなかったから。
リドルならともかく、王子でもないトレイが彼女に敬語を使うのは当然だった。
『やっぱり…トレイやデュースにも、初対面の時のように接して欲しいとお願いするのは…
ワガママなのかしら』
「う、///」
上目遣いでお願いするオーロラを見て、トレイは条件反射のように照れてしまう。
「ぼ、僕達は…王族ですらありませんからね…
タメ口は、どうなんでしょうか///」
見上げられていないデュースまでが、何故か照れている始末。
そんな状況を見かねて、フィリップが口を開いた。
「別に、オーロラがいいって言ってんだからいいんじゃねーの?
まぁ、お前等がこいつと距離空けときたいって言うなら話は別だけどな」
「「滅相も無い!」」
照れていた2人は一瞬でどこかへ行ってしまったようだ。
ハキハキとフィリップに言い切った。
『ほんと!?やった!じゃぁトレイもデュースも、もう私のお友達ね!』
可愛らしくピョン、と跳ねるオーロラ。しかし2人は手放しで喜べなかった。
「「…友達」」ですよね。そりゃ
「ははっ!そうそう!友達友達!よかったなぁオーロラ」
『うんっ』
オーロラの頭を撫でる、心底嬉しそうなフィリップ。
リドルは、トレイとデュースを見て同情した。
何故なら、ついさっき自分も全く同じダメージを受けたから。