第5章 ユニークなトランプ達は踊る
『…私、今日リドルに会えて良かったわ』
「え…」
唐突にそんな事を言われたものだから、リドルは思わず彼女の瞳を覗き込んだ。
すると、まるで自分を吸い込んでしまいそうな瞳で。彼女はこちらを見ていた。
『私あまり、この城から出してもらえなくて…
今までお友達って、いなかったの。
だからリドルが、私の初めてのお友達』
ふわりと、嬉しそうに笑うオーロラ。
リドルは、胸にチクリと走った痛みを。彼女には悟られないよう必死で隠した。
そう。“ 友達 ” なのだ。彼女にとって自分はただの友達。
しかしオーロラは、フィリップの事は友達としてカウントしていない。
フィリップは恋人で。自分は友達。
当たり前の事だが、それが今の彼女との距離。
しかし、彼女があまりにも嬉しそうに自分に微笑むものだから。
リドルは自分の胸に鞭打って、笑顔を作った。
「…それは、光栄の至り。
間違いなく、キミはボクの友達だ。オーロラ」
そんな2人のやりとりなど聞こえるはずもないフィリップは、どことなく不服な顔付きだった。
オーロラと仲良く踊るリドルを見ていられないのだろう。要はヤキモチだ。
そんな分かりやすい彼を見て、トレイはなんとか笑いをこらえていた。
しかし、
「…何笑ってんだよ。緑色」
必死に笑いを噛み殺しているのを、フィリップに見抜かれてしまう。
自分の事を緑色。と呼んだ彼に
トレイは、自分の若緑色の髪を触りながら名乗る。
「トレイ・クローバーと申します。フィリップ王子様」
「はは!トレイさんが緑色なら、僕は青色ですね!」
底抜けに明るい口調でチャチャを入れてくるデュース。
しかしフィリップは、オーロラをリドルに攫われて。
さらにそれをトレイに笑われて。
言うまでもなくとても不機嫌だった。
「…お前は村人Aだ」
「っぶ///」
冷たく言い放ったフィリップと、思わず吹き出すトレイ。
「青色って呼んで下さいよ!!」
デュースは、彼に縋るように懇願した。