第5章 ユニークなトランプ達は踊る
「失礼」
『!フィリップ…』
人混みを掻き分け、オーロラの元にフィリップ王子が現れる。
「オーロラ姫様。私と一曲、踊っていただけますか?」
「まぁ!まぁ!いいじゃない!私見たいわぁー!お姫様と王子様のダンス!」
そう感極まったのは、妖精のフローラ。
オーロラを取り囲んでいた人々も、快く彼女を許嫁の元に送り出す。
フィリップが、すっと肘を上げて。自分の体との間に隙間を作った。
オーロラは自然に、その隙間に腕を通す。
2人が広場の中心に到着すると、楽器隊が艶やかなクラッシックの演奏を弾き鳴らす。
そして、フィリップは少し強引に彼女の腰を引き寄せた。
2人の距離はぐっと縮まる。
『ありがとう。フィリップ』
「…は?何が?」
ダンスを始めた2人を、その場にいる誰もが眺めている。
そんな視線は気にも留めないで、王子と姫は踊る。
『私が、たくさんの偉い人に囲まれて、疲れてるんじゃないかって心配して
ダンスに連れ出してくれたんでしょう?』
オーロラは、彼の手の中でくるりと華麗にターンをしながら言った。
「…お前にいい事教えてやるよ。いいか?
良い女ってのは、例え事実に気が付いてもな。何でもかんでも口に出さねぇんだよ」
照れたように文句を言いながら、丁寧なステップを踏む許嫁に。
彼女は少しだけ見惚れていた。
「いいなぁいいなぁフィリップは。
オレだってお姫様と踊りてぇのに!」
「フロイド。フィリップ王子様。ですよ」
自分もオーロラと踊りたいと駄々をこねるフロイドに、ジェイドは言う。
「大体、貴方踊れないでしょう」
この言葉に、う。と言葉を詰まらせるフロイド。
「だってさぁ…まさかこんなところで必要になると思わないじゃん」
「ふふ。やはり、真面目に僕と学んでおくのでしたね」
実は
フロイドと違って、アズールとジェイドは一般的な社交ダンスなら踊る事が出来た。
ジェイドが言う通り、自分も踊れるように勉強しておくべきだったと。後悔するフロイドだった。