第5章 ユニークなトランプ達は踊る
大勢の人に囲まれる彼女を遠巻きに見つめているのは、ハーツラビュルの3人だけではなかった。
フィリップの付き人である、オクタヴィネルのフロイドとジェイドもまた オーロラの事を観察していた。
「今日もお姫様は人気者」
フロイドは皮肉たっぷりに続ける。
「ちょうダルそー。オレ、王族に産まれなくて良かったって心底思うわ。
あんなふうに他人に揉みくちゃにされる フィリップとか姫様見てたら、まじ同情〜」
自分が興味のない他人とは、関わりを極力避けたいと考えるフロイドは。隣に立つジェイドに語りかける。
ふむ。とジェイド。
「たしかに…僕も同感ですね。
ですが、オーロラ姫様は見事なまでの対応をなされていますよ」
2人は改めて彼女を見る。
不特定多数の人に囲まれる彼女だったが、笑顔を絶やす事なく対応していた。
然るべき人物に然るべき話題を振り。
全ての人と会話が出来るよう気を配っていた。
「たまたま王族に産まれて、ただ甘やかされて育っただけのお嬢さんには
あそこまでの対応は出来ません。
きっと彼女には、王家として人の上に立つ素質があるのでしょうね」
フロイドは驚いた。
基本的にジェイドは人をこんなふうに褒めたりしない。
「あれでまだ10歳。このまま彼女が成長していけば
きっと素晴らしい先導者になる事でしょう」
フロイドが知る限り、彼が認めた人間はアズールのみ。
「へぇ、オレはよく分かんないけど〜
じゃーディアソムニアは、お姫様がいれば安泰だねぇ」
「…そうですね。
まぁ…彼女が、このまま何事もなく成長出来れば。の話ですが」
フロイドは、くつくつと笑うジェイドの横顔を
眺めていた…。