第4章 運命に引き寄せられた出会い
オーロラ10歳の誕生祭まで、残すところついに後1週間となった頃。
死の淵から生還したリリアは、なんとか1人で歩けるくらいにまで回復していた。
「リリア、本当にもう歩いて大丈夫なんだろうな」
神妙な顔をして、リリアに詰め寄るマレウス。
「ふふ、お主はいつからそんなに過保護になったのじゃ。
まるでワシの母親のようではないか」
いつものマレウスなら、誰が誰の母親だ。と
冷静なツッコミの1つでも言っていたであろう。
しかし、彼は変わってしまった。
「…過保護にもなるだろう。
僕は、もうあんな思いをするのはごめんだ」
「……」
悲痛な顔で呟く、主人の横顔を見つめるリリア。
リリアは気付いていた。
マレウスが、あの日を境に笑わなくなってしまった事。
そして、その胸の中に渦巻いた
黒くドロドロとした憎悪。
彼は、この世の全てを憎んでいる。そう言っても過言でも無いくらいに
その身を憎しみに沈めてしまっていた。
彼が愛読していた、他人との関わりを助ける本
“素敵なプレゼントの選び方” も
“他人との上手なコミュニケーションの取り方” も
いつのまにか本棚から姿を消していた。
今のマレウスを見ていると、リリアは不安で仕方がなかった。
以前のようにこの古城に引きこもるだけならば、まだいい。
しかし、今の彼は…
他人を傷付けてしまいそうな危うさを孕んでいるのだった。