第26章 眠り姫の物語
「目がチカチカするわね。
はぁ…。あり得ない。せっかく素材が良いのに、あれじゃ見れたものじゃないわ」
そう呟いたのは、とある国の王子様。周りとは一線を画した その美しい男は、次々と色を変えるドレスを見て嘆いている。
「ふふ…そうかい?私には、あれはあれで美しく見えるけどね!
あのようなドレス、着こなせるのは彼女くらいだろう。実にトレビアン!」
彼の隣に立つ、オカッパ頭の男は言い切った。
彼らのように、今日は様々な国から 高貴な客達が招かれている。
その中には、未だに城内に入ろうとしない、変わり者も見受けられた。
「どうして、城の中に入らない?」
「どうしてって、オレは待ってるんだよ!」
「…嫌な予感しかしないが、一応聞こうか。お前は何を待ってるんだ?」
「何って、決まってるだろ?オレが待ってるのは…象だ!」
「ぞっ!?」
「お祝い事には、象が欠かせないだろ?パレードがない祭りなんて、祭りじゃない。象が居ないパレードなんか、パレードじゃないからな!!
だからオレが象を呼んだんだ!でもおかしいんだよ。そろそろ着いても良い時間なんだけどな。
あ!!もしかして、どこかで迷子になってるとか!?うーん、8頭は流石に多かったか…!」
「8っ…!?」
褐色の肌をした男性2人組。その内の1人は、王子を置き去りに、真っ青な顔をして 箒で地平線の彼方へ消えてしまったのだった。
果たして彼は、象の集結、そして無断での大パレード計画を、無事に阻止出来たのだろうか…