第26章 眠り姫の物語
「だ、としてもだよ」
リドルは、ダンスに興じるローズの姿を見て 眉を寄せた。
「 “ アレ ” は、頂けないね」
リドルが言う アレ、とは…。
ローズの、ドレスの色であった。
彼女が身に纏っているドレスは、花嫁らしい 真っ白なウィディングドレス。
純白が非常によく似合ってはいるが、彼はどうやら不服らしい。
そしてなんと、我慢の限界!とばかりに、ステッキを振るってしまう。
その瞬間、純白だったドレスは 真紅に染まった。
「…うん。やっぱり彼女には、燃えるような薔薇色が 良く似合う」
「そうか?俺はやっぱり、ローズには…瑞々しくて優しい緑色が似合うと思うけどな」
なんと、トレイが魔法を上書きしてしまう。その瞬間、ドレスは新緑のような緑色に変化するのだった。
「トレイ!一体何をするんだい!」
「ん?ははっ」
「笑って誤魔化すでないよ!」
「…ローズなら何色でも似合うけど、俺はやっぱり…」
リドルとトレイが小競り合いをしている最中、デュースが密かにステッキに手を伸ばす。
そして、やはりローズのドレスの色を変えてしまう。
今度は、夜空を思わせる濃紺だ。
「「デュース!」」
「っっ!す、すんません!」つい!
またリドルが、赤に変え。するとトレイが緑に変える。そこにデュースも参加して、ローズのドレスは次々にその色彩を変化させた。