第4章 運命に引き寄せられた出会い
マレウスの体に、邪悪な力が集まっていく。
言うまでもなく、彼は憤怒しているのだ。
突然、理不尽に自分の仲間を傷付けられた事で。
「オ、オーロラは、お前には渡さない!」
そして王は、その血に濡れた剣を未だにマレウス達へ向けている。
リリアは自分が重症を負っているにも関わらず、
マレウスが冷静でない事を危惧した。
自分が今、彼を止めなければ大変な事になる。そう悟っていた。
血液が上がってくるのを感じながらも、なんとか口を開く。
「くく…、マレウス、よ…。何を、そのように怒っておるの、じゃ…
ワシがこれくらいで、くたばると思っておるのか?
早く…城へ、帰るぞ…」
「………」
マレウスは、悲しい瞳で横たわるリリアを見た。
そして、自分の中でぐちゃぐちゃに渦を巻く色々な感情に折り合いを付けるように
静かに瞳を閉じた。
次に目を開けた時には、もう邪悪なオーラは消えていた。
マレウスはリリアを横抱きに抱えると、ゆっくりと地下室を後にする。
そんな姿を、静かに見守るステファン王。彼とて、マレウスとぶつかって勝てるとは思っていない。
このまま彼が去ってくれる事を望んでいる。
しかし、オーロラはマレウスの背中に向かって叫んだ。
『行かないでっ!///』
「!」
マレウスの身体が、その声にピクリと反応する。
ステファンは、娘の気がおかしくなってしまったのかと動揺した。
やっと去ろうとしている脅威を、なぜ自ら呼び止めるのか。と。
しかし そんな事は、彼女にも分からなかった。
ただ、オーロラは感じていた。今回のこの騒動は、彼等が起こしたものではないと。
例え、城を襲った奴等と同じ服装をしていても。
どれだけ怖い見た目をしていても…
彼等は違う。そう信じたかった。
だって、先程まで熱く見つめ合っていたマレウスの瞳は、とても優しかったから。
10年前、彼女はまだ赤子で。
去り行く彼に言えなかった。
“行かないで” と。
しかし今なら、ちゃんと言葉に出来る。自分の気持ちを伝えられる。
『…お願い…、行かないで、』
しかし、リリアを抱えたマレウスは。
10年前とは違い…
1度もオーロラの事を振り返る事なく、城を後にした。