第25章 全てを 超えて
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「どうやら、上手く話はまとまったようだね」
扉を少しだけ開き、中の様子を静かに窺ったリドルが呟いた。室内にオクタヴィネルの3人がいたのは気になったが、そっと扉を閉じた。
「僕達が、揃いも揃って失恋した事実にさえ目を瞑れば…最高ですね」
「最高か。はは!まぁ、そうだな。ローズの命に比べれば、俺達の失恋なんて安いもんだろ」
「それでも…あの2人にとっての試練は、まだ続くのだけれどね」
リドルは、何かを思案するように俯いた。トレイは彼が何を案じているのか悟っているようで、困ったように微笑んだ。
デュースはそんな2人の隣で、試練とは?と首を傾げた。
「考えてもごらん。あの2人の婚姻を…国王であるローズの父が快諾するとお思いかい?」
「あ!そう、ですよね…。ローズの両親からしてみれば、マレウスは彼女に呪いをかけた張本人なわけだから…」
「両親だけじゃないぞ。国民だって、やっぱりマレウスの事を良くは思っていない。元々、畏怖され敬遠されていた存在だ。
皆んなから愛されているローズの結婚相手として、認められるのは難しいだろうな」
この3人も、マレウスを信用するのには かなりの時間を要した。まだ何の事情も知らない国民や、国王と王妃。たとえ2人の関係を知ったところで、はいそうですか と納得出来る可能性は まず無い。
「しかし。ローズを手に入れたんだ。それくらいの苦労はしてもらわないと、割に合わないと思わないかい?
……でもまぁ、少しくらいなら…助力してあげない事も、ないけれどね」
まるで照れた顔を隠すように、リドルは長いマントを翻して廊下を進むのであった。
そんな主人の後ろを、2人はニコニコとした破顔の表情でついて行く。
そろそろ目が覚めた頃合であろう国王達の元へ、3人は向かう。とりあえず、ローズの無事を知らせる為に。