第25章 全てを 超えて
駆け寄って来た彼女を、フロイドが受け止めた。
「良かった。目、覚めたんだねぇ」
『うん…ありがとう。皆んなのおかげ』
その抱擁は、ローズの無事を喜ぶものであり、特別な意味など無いはずなのだが…。マレウスは 抱き合う2人に、鋭い眼光を飛ばしていた。
「おやおや、随分と余裕がないように見受けられる。この世界屈指の魔法士様ともあろうお方が」
「ふふ、そうですよ。あれは健全なハグです」
明らかに苛立っているマレウスに、2人は茶々を入れた。彼を揶揄う事が出来る猛者は、おそらくはそう居ないはずであるが…。アズールとジェイドは、愉快そうに彼の反応を楽しんだ。
「ほんと良かったねぇ。じゃあさ、今からでもオレにしない?だって超頑張ったんだよ?めっちゃ体張ったしー?」
『フ、フロイドったら…』
「……あれでも、健全なハグとして見逃せと?」
「「……」」
今にも一国を丸ごと滅ぼしてしまえそうなマレウスの剣幕に、流石の2人も彼から目を逸らすのであった。