第4章 運命に引き寄せられた出会い
オーロラは、全てをその瞳で見ていた。
マレウスの背後に忍び寄る、ステファン王の姿。
父の手には、細く鋭い剣が握られていた。
そして、その刃は
マレウスを庇ったリリアの身体を貫いた。
『っっ、///』
オーロラは、声にならない声を押し殺すように
自分の口元を手で覆った。
(フロイド、行きますよ)
(……はぁい)
混乱の中、2人は地下室から飛び出していく。
フロイドは扉をくぐる瞬間、オーロラの方を見たが
彼女は彼を、一瞥もする事はなかった。
(…なんだろ…。この、面白くないっていうか…
胸がギュってする感じ)
部屋に残されたのは、オーロラ、ステファン王。
そしてマレウスと、リリアだ。
「オーロラ…、オーロラ!無事かっ…」
王は彼女に駆け寄ると、体の無事を確かめるように優しく抱き締めた。
「お父様も、無事で…、」
親子が感動の再会を果たしているその時、そのすぐ隣で
マレウスは傷付いたリリアの身体を抱えていた。
「リリアっ…!」
「っ、く…、///」
リリアの身体から剣はとっくに抜かれていたが
傷口からはどくどくと赤黒い血が流れ続けていた。
剣は心臓の近くを貫いており、
傷の辺りはじゅうじゅうと音を立てて、白い煙を上げていた。
彼等の体は普通の人間とは違い、少々特殊だった。
普通の鉛や鉄などで出来た武器では、マレウスとリリアを傷付ける事は出来ない。
2人にダメージを与えられるもの、それは
魔法と、あとは “銀” 。
リリアは非常に運が悪かった。もしここに駆け付けたのがただの兵士で、彼を貫いたのが普通の剣ならば。この事態には陥っていなかっただろう。
なぜなら、普通の兵士が持つ剣や銃は、鉄製。
しかし、王の剣は特別製で。その刀身は銀で出来ていたのだ。
勿論ステファン王は、彼等の体が銀に弱い事など知らない。
娘を守りたいが為、必死で持っていた剣を振るっただけに過ぎないのだ。