第24章 誠意の欠片も感じられない謝罪
交渉役は、アズールの得手とするところ。フロイドもジェイドも、こういう場面で自ら出て行ったりはしない。
「実は、この城の主にお会いしたくて遠路遥々やって来たのですが。御目通り願えますかね」
「残念だったな!若様は、いま…えっと、あれだ。誰にも会わない!」
「そうなのですか?それは何故でしょう」
「主は今、所用で城を空けている。申し訳ないが、用があるなら出直して来てくれないか」
何日も主人が 部屋から全く出てこない。馬鹿正直にそう教えてやるほど、シルバーは愚直ではなかった。
だから咄嗟に、でたらめな言葉を並べたのだ。しかしシルバーの隣にいる真っ直ぐ過ぎる男が、彼の計算を狂わせる。
「シルバー!何故嘘をつく!若様ならずっと城の中にいるだろう!むしろ、出て来てくださらないから困っているというのに」
「セベク…」
「うわぁ、こいつ頭わりぃんだろうなぁ」
「ふふ。同僚の方の苦労が目に見えますね」
真に恐ろしいのは、優れた敵ではない。愚かな仲間である。
誰が言ったか知らないが、上手く言ったものだ。シルバーはこの場面で、それを痛感させられるのだった。
「まさか、居留守を使われるなんて。僕の心はそれは深く傷付きました」
「ちょっとー、うちのリーダー泣いちゃったんだけどぉ?どう責任取ってくれるわけ?」
「なっ!泣いてなどいないじゃないか!嘘をついてはいけないと教わらなかったのか!?恥を知れ!この人間風情が!」
「おやおや。つい先程、貴方のお仲間さんが嘘をついていたのをお忘れなのでしょうか。愉快な方です」