第24章 誠意の欠片も感じられない謝罪
「よく、お聞き。
ローズの好きな人は、あの
マレウス ドラコニアだ」
その場にいる者達の 呼吸音さえ聞こえてきそうなくらい、部屋は静まり返った。
その事実を知っていたトレイとデュースは置いておいて、アズールは目を見開いた。そして、リドルの言葉を各々の頭の中で反芻した。
しばらくして、ようやく自体を飲み込めたのか、彼は口を開いた。
「ローズさんは、自分を呪った相手を…愛しているというのですか」
「そういうことだよ」
「…なんて事だ…。ありえない、一体どうして」
「理屈じゃねぇんだろうなぁ」
「理屈じゃないんでしょうね」
至って冷静に、フロイドとジェイドは言った。言葉遣いこそ違うものの、彼らは同時に同じ意味の言葉を口にしていた。
ローズの想い人がマレウスである。その衝撃的な事実を耳にしても、さほど動揺を見せていない双子。そんな2人にトレイは問う。
「2人は、あまり驚かないんだな」
「まぁね〜」
「ローズから聞いていたのか?」
「彼女の口からは聞いていません。ですが僕達は
“ 見て ” いましたから」
「??」
「オレとジェイドは “ 居合わせた ” から」
そう。フロイドとジェイドは、見ていた。居合わせていた。
ローズとマレウスが、
初めて互いを、その瞳に宿した瞬間を。
初めて互いの、声を耳にした瞬間を。
あれは、ローズが10歳を迎える二ヶ月前。彼らがディアソムニア城を襲撃した時だ。
その時、地下室でジェイドとフロイドは聞いた。生物が、恋に落ちる音を。
引かれ合う2人が、出逢うべくして出逢った衝撃。ローズとマレウスは、その衝撃に涙を堪える事が出来なかった。
それは、本能が流させる 涙だった。
あの光景を、運命の出逢いと呼ばずして何と言おう。
フロイドとジェイドは認めたくはなかったが、ローズを助ける為に、己を殺し、いま 認めた。
マレウスこそ、ローズを目覚めさせる事の出来る、ただ唯一の男なのだ。