第23章 呪われし姫の帰城
これ以上無い というくらいに落ち着きのない5人。何度か、部屋へ踏み込もう との案も出たのだが…。まかり間違ってフロイドとローズのキスシーンを目撃したら耐えられない。との結論に至った為に現場待機していた。
そんな中、ようやくフロイドは皆んなが待っている廊下へと帰る。
退室するなり、アズールにしな垂れかかった。
「アズール〜……お姫様、オレの事好きじゃなかったのかなぁ。マジそんなの信じたくねんだけどぉ!」
「フロイドは相変わらず自信過剰ですね。でもこれで分かったでしょう。彼女が選ぶのはお前じゃ無く、この わた」
「おい。ジェイドは?」
トレイの言葉で、その場にいた全員が辺りを見回す。そこに、ジェイドの姿だけが無かった。
彼は、フロイドと入れ替わりに入室を果たしていた。
コツコツと靴音を響かせて、眠るローズの側へと歩み寄る。そして、胸に手を当ててニッコリと微笑んだ。
「やはり、貴女は眠っている時の方が美しいですね」
彼の棘を孕んだ言葉にも、当然ながらローズは答えない。
「…今のは冗談ですよ?
はぁ。本当に、つまらない。僕の嫌味に、ムキになって楽しい反応を返してくれない 貴女など」
ジェイドは片膝をついて、より近くでローズの顔を覗き込む。
彼は今、自分と彼女の過去を思い出していた。
ひょんな事から、2人で足を踏み入れる事になった 夢の中。シンデレラと王子を結び付ける為に奔走した時間。
今になっては彼にとってそれは、かけがえのない大切な思い出となっていた。
「ローズさん。貴女は僕に教えてくれました。
“ 運命 ” とは、足掻いて もがいて 必死で努力して、そしてやっと辿り着く事の出来る場所 だと」
ジェイドは、徐々にローズの口元への距離を詰める。
「そんな貴女の自論を聞いてから、嫌いだった運命という言葉も…さながら悪いものではないと。思えるようになりました。
…貴女となら、運命とやらの その先も、見てみたいと思ったのです。
心から、愛しているのですよ。ローズさん」
ジェイドは、彼女に幾度目かのキスをした。
しかし。
ローズは目を開かない。