第22章 真実の愛はディアボリック
「ローズ。僕の話を…聞いてくれるか」
『ええ。もちろんよ、マレウス』
鈍色の空、遠くには雷鳴が鳴り響いていた。
雨の予感。
しかし そんな事、今の2人にはどうでもよかった。そんなのは気にしている隙間など無かったから。
マレウスが、薄く唇を開く。少し震えているようにも見えた。
しかし。彼が音を発する直前。耳をつんざくような叫びが2人の空間を切り裂いた。
「何…っ、やってるんだ!!」
『!!』
「……」
マレウスだけは冷静に、その場に現れた男の名を口にした。
「デュース・スペード…」
彼は、たしかにマレウスが眠りにつかせたはずだった。いつかのフルムーンの夜のように。しかし、誤算があった。
リドルとトレイが、森の家に到着したのである。
着いたばかりの2人が目にしたのは、机に突っ伏して眠るデュース。しかも、ローズの姿はどこにもなかった。どう考えても異常事態と考えた彼らは、森の中を手分けして探した。
そして、マレウス達を見つけたのはデュースだった。
「っ…マレウス!!」
『デュース、黙って出て来てごめんなさい!謝るから、だからそんなに怒らないで』
ローズの声は、彼の耳には届かない。
デュースはただ必死に、マレウスの体から溢れるオーラと戦っていた。震え出しそうになる体を押さえつけて。
彼女を背に庇い、マジカルペンを構える。
デュースは誓いを立てていたのだ。今度こそ、自分の身を犠牲にしてでも、ローズを守ると。