第22章 真実の愛はディアボリック
「過去の過ちを、今は心から後悔していると。マレウス様のお心を、正直に打ち明けてみてはどうでしょうか」
「……」
「シルバー!な、なんて…」
「マレウス様。人間は、確かに脆く儚いかもしれません。
ですが、心は そう弱くはないかと。
人とは 他を許し、そして愛せる生き物です」
「なんて良い事を言うんじゃ!わしは感動した!」
リリアにめちゃくちゃに頭を撫でられるシルバー。実は彼、この城に住む中では唯一の人間なのである。
妖精族ではなく、人間。そんなシルバーが語ったからこそ、この言葉は大きな意味を持つ。きっと、マレウスの心にも響いた事だろう。
「そうだな。シルバーの言う通りだ。
僕は、ずっと逃げていた。本当の事を打ち明けて、ローズが目の前から消えるのを、見たくなかった」
「きっと大丈夫ですよ。マレウス様なら」
「そうじゃそうじゃ!」
「マレウス様の魅力に、囚われない者などいません」
「よっ、この色男!イケメン!」
「強靭な肉体。溢れる魔法力。涼しげなお顔立ち」
「も、もうやめろ。お前達…」
リリアは置いておいて、シルバーは本気でマレウスをそのように崇拝していた。
隠す事なく、容赦無く浴びせられる賞賛の言葉に、座りが悪くなる心地だ。
しかし、そこへさらに状況を悪化させる男が登場する。
「なんですか!?若様の素晴らしいところ発表大会をするなら、どうして僕も呼んで下さらないのですか!!」
「はぁ…セベク、そんな大会はしていない」
「まず、その思慮深さ!そして海よりも深い懐とっ」
「マレウス様。セベクは一度こうなったら、もう止まりません。どうか捨て置いてお出掛け下さい」
「くふふ、シルバーはセベクに対しては容赦がないのぅ」
マレウスは、自慢げに自分の事を語るセベクを横目に、そっと玄関扉を押した。