第21章 育まれる愛とフルムーン
ローズは、デュースに言われて月を見ていた。
どうして言われるまで気が付かなかったのだろうか。そう思うくらい、今夜の月は綺麗だった。
恋をしている彼女は、こう思う。
マレウスも、この綺麗な月を見ているのだろうか。
もし見ていないのならば、今夜の月がこんなに美しいと教えてあげたい。
もし見ているのならば、一緒に見てみたい。
そんな淡い気持ちを抱きながら、彼女はマレウスから貰った指輪を指でなぞる。
ゴン!!!
『ぅわぁ!ちょ、デュース!?』
「———」ぐぅ
なんと、目の前に座っていたデュースが突然にして意識を失った。支える力を失った頭は、自然落下でテーブルに叩きつけられたのだった。
紅茶の残るカップに突っ込まなかっただけ、まだマシだと言えるかもしれないが…。
『び…っくりした。えぇ?でも人ってこんなふうに突然寝る生き物だったかしら』
「邪魔をするぞ」
『!!』
さらにローズを驚かせる出来事が起こった。なんと、この森の家にマレウスが現れたのだ。
角が上に当たらないよう、頭を下げて玄関をくぐる。
『マ、マレウス?どうしてここ、に、』
「呼んだろう」
『え、』
「僕を、呼んだろう。ローズ」
『…っ、
うん。そうね、私は貴方を呼んだわ。マレウス』
ゆっくりと立ち上がり マレウスの前に歩み出て、ローズは自分が心の中で彼を呼んだと認めた。
マレウスは、森の家は落ち着かないからと、少し歩こうとローズを誘い出す。
今夜は、月が大きく出ているから きっと近くを散歩するくらいならば問題無いだろう。
彼女は眠るデュースの肩に毛布をかけて、マレウスと共に夜の森へと繰り出すのだった。