第21章 育まれる愛とフルムーン
座っていたローズの腕を上に引き、自分の中に閉じ込めたデュース。
まるで、寂しそうな少女の心の隙間を埋めるように…強く、しかし優しく抱き締めた。
『…デュース。何年もの間、私を守っていてくれて ありがとう』
「さっきから、ローズは…っ、どうしてそんな…諦めてるみたいな事ばかり言うんだ!
もう少しだろ…!もう少しで16歳になって、そこを越えればいいだけじゃないか!」
『……泣かないで、デュース』
「頼むから…っ そんな悲しい事ばっかり言うなよ!
俺が絶対、守ってやるから!!側にいて守るから!だから、今はまだ ありがとうなんて言うな!
ローズは、これから17になって、18になって、大人になるんだ!それで、俺達とずっと一緒にいるんだ!」
『——ありがとう。デュース、ありがとう…』
デュースの小さく震える背中を、ローズはさする。その手付きが、優しくて。愛に満ちていて。
彼は泣き止むどころか、さらに涙が後から後から溢れてしまうのであった。
こんな日が、来るのは彼とて覚悟していたはずだった。
しかし。運命の日が刻々と押し迫ると共に、デュースもローズと同じように “ 終わり ” を意識してしまう。それを、誰が責められよう。
大切な人が、遠くに行ってしまうかもしれない。その恐怖に、打ち負けそうになってしまうのは きっと自然の成り行きだ。
そんな人間らしい2人は、体を寄せ合って 互いの心の隙間を埋め合うのであった。