第21章 育まれる愛とフルムーン
「…もう、あと2週間なんだな」
『そうね…。いつの間にか、もう2週間前』
ローズは、デュースの言葉を繰り返して、ふと窓の外に目をやった。
そこには、見事な満月がぽっかりと浮かんでいた。窓際に置かれた花瓶が、月明かりを受けて長い影を作っている。
彼女が16歳の誕生日を迎えるまで、あと2週間というところまで差し迫っていた。
嫌でも、残された時間を数えてしまうのは自然な事だろう。
『…今でもね、よく夢に見るの。
私が10歳の時に催された生誕祭の時の事。
私、お城からほとんど出た経験がなくて…年の近い仲良しな人と言えば、フィリップくらいしかいなくて。
それでも自分が恵まれていたと思っていたし、不満なんて全然なかったけど…
デュースは覚えてる?
あの日ね、私に一度に3人のお友達が出来たのよ』
「……覚えてるに、決まってるだろ」
『うん。ありがとう。そう、あの日ね
リドルとトレイと、デュースが私の世界を広げてくれたの。
凄く、楽しかったなぁ。たくさんのお友達と遊ぶのが、こんなにも楽しいだなんて、知らなかったから。
赤いペンキで、薔薇を塗ってる貴方達を見つけた時は驚いたけど!ふふっ。
でも、怪我した小鳥を助けてくれたりして…。優しい人達なんだって思ったり、頼もしいなって思ったり。
本当に、凄く良い思い出』
「…なぁ、もう…やめてくれよ」
『その後、私は呪いにかけられちゃうわけだけど。でもね、私 これで良かったとさえ思っているの。
だって そのおかげで、私は最高に楽しい6年間が過ごせたから!
皆んなには迷惑をかけてしまったけど、本当に…幸せな6年間だった』
「頼むから、もうやめろ!」
まるで、さよならを意識したような言葉彼女の言葉を、それ以上聞いていられなくて。
デュースは、ローズの腕を上に引いて その体を引き寄せた。