第21章 育まれる愛とフルムーン
「…すまない。少し、呆けてしまっていたようだ。
妖精族にも、お前ほどの声を持つものは少ないからな。これからも大切にするといい」
『…そういえば、マレウスは妖精族だったわね』
「なんだ、忘れていたのか?相変わらず、おかしな奴だ」
『うぅ。…だ、だって、その立派な角以外は、人間とさほど変わらないじゃない?
嬉しい事があれば笑うし、たまに悲しそうな顔もしてる。そういう感情の波をマレウスはちゃんと見せてくれるから、つい私と同じだと思ってしまうのよ。
あれ?そもそも、妖精族と人間って、見た目以外でどこが違うのかしら』
「!!
はははっ!本当に僕を楽しませてくれるな、人の子というものは」
マレウスの楽しそうに笑う声に、ローズは頬を膨らませる。
彼の反応を見て、いかに自分が世間知らずが思い知らされたのだ。
しかし、彼女がそういった知識を持ち得てないのも仕方がないのかもしれない。
森の家で6年もの月日を過ごしているローズにとって、情報源といえば たったの数人。
しかもその情報源である彼らは、意図的に妖精族の話を避けていた。無論、ローズに呪いをかけた種族の話などしたくなかったからだ。
可愛らしく頬を風船のようにしているローズを 愛おしそうに見つめ、マレウスは妖精族と人間の違いについて語る。
「そうだな…。やはり、魔力の絶対量が違うだろう。妖精族は生まれながらにして、多大な魔力を秘めているものだ」
『ふぅん。人間は、リドル達みたいに魔法を使える人もいれば、魔力の欠片もない 私みたいなのもいるものね。
いいなぁ…。妖精さんは。私も妖精族に生まれていれば、魔法が使えたのに』
「異なっているのは、それだけじゃない。
人間と妖精族。最も大きな相違点、それは
寿命だ」