第3章 暗躍する確固たる悪意
男は自分が入ってきた扉を、静かに閉めた。
城を襲ってくるような族にしては、落ち着いた所作だった。
その場にいた全員が、男の異様な雰囲気にのまれそうになった。
その入ってきた男こそ、フロイドその人だ。
しかし彼は、深々とフードを被って顔を隠している為。
誰もその正体に気が付かない。
フロイドは、目的の人物を見つける事が出来た嬉しさを隠し切れず。
オーロラの方を見つめてほくそ笑んだ。
そんな様子を見た兵士は、2人同時にフロイドに斬りかかる。
彼は冷静に、一歩だけ後ろに下がった。
空振るはずの、兵士の剣と剣が激しい音を立ててぶつかった。
フロイドはそんな様子をまるで楽しむように見つめる。しかしすぐに身を捻った。
上半身は動かさないまま、その長い足で蹴りを繰り出す。
ポケットに手を突っ込んだまま繰り出されたデタラメな蹴りのはずなのに、
軽々と兵士の1人は吹っ飛んだ。
それを見たもう1人の兵士は、まだフロイドの体制が整わない内に後ろから斬りかかる。
しかし、その剣も彼を捉える事は出来なかった。
フロイドは兵士の方を振り返る事もせず、後ろ蹴りを叩き込んだ。
相変わらず両手をポケットに入れたままのふざけた格好で、1歩1歩オーロラの方へと向かって行くフロイド。
残った兵士が、一斉に銃を構える。
するとフロイドは、右手を大きく翳して、振り下ろした。
ただ彼の腕が、空を切っただけに見えたのだが。
空気中からたちまち水が集まってきて、いくつもの水の塊が現れた。
それぞれの水の塊は、まるで意思を持っているように動き。
兵士達の銃を包み込んだ。
「っく、!火薬がっ」
水で火薬が湿ってしまい、全ての銃はただの鉄の塊と成り下がったのだ。
さらにその水達は、今度は兵士達の顔の方へと移動。
「っがっ!///」
呼吸が困難になった兵士達は、顔に張り付く水を排除しようともがいた。
もはや、剣を振る余裕などない。
そんなもがき苦しむ彼等を、フロイドは次々と蹴り倒して行く。