第3章 暗躍する確固たる悪意
実際のところ、城を襲撃している人数は20にも満たなかった。
なぜなら、彼等の目的は落城ではないから。
彼等の狙いとは…
この襲撃の濡れ衣を、マレウス・ドラコニアに着せる事。
だからわざわざ、黒い衣装に身を包んでいるのだ。
この衣装は、マレウス達が普段着ている物に似せて作った特注品。
そんな黒装束を着て、実際に城を襲う者は勿論…
彼等。
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(フロイドは、上手くやっているでしょうか。
勢い付いて殺してなければ良いのですが…)
兄弟の心配をするジェイド。
彼は既に城内に侵入し、内部を掻き回していた。
もう何人もの兵士を気絶させていた。
彼ほどの魔法力を持ってすれば、単発銃など何も怖くない。
剣なんてもっと相手にならなかった。
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(…残念ですね、ステファン王。
大人しく僕の言う通り、マレウスの城に進軍させていれば
こんなふうに城を襲撃される事もなかったというのに)
闇に乗じて、城の最上部からステファン王を見つめるアズール。
国王は果敢にも、城に引きこもる事はせず。
剣を構え、兵士の指揮を取っていた。
(これはこれは…頂けませんね。
“キング” が丸裸じゃないですか。
まぁ…チェックメイトはしないでおいてあげましょう。
むやみやたらに殺すのは、僕のやり方に反しますからね)
ふと腕の時計に視線を落とす。
これだけ盛大に暴れれば十分だと満足した彼は、撤退の合図を出すタイミングを計り始めた。
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(アハハッ、暴れるの楽しすぎー。
さぁて…お姫様は多分地下かな?)
フロイドは、明確な目的を持って城内を駆けていた。
彼の目的。それは、オーロラだった。
別に傷付けようとか、殺してしまおうとか。そういう事は考えていなかった。
ただ、フロイドには絶対に完遂したい事柄があった。
地下室に向かう途中、出会う兵士を片っ端から気絶させていく。
(…一応手加減してるけど…1人2人死んじゃってたりしてー)
決行前、アズールとジェイドに “殺さず” を約束させられたのだった。
絶対に、誰も殺していない。と断言出来る自信は彼にはなかった。
そんな彼の前に、目的の部屋の扉が現れた。