第19章 悔恨と踠きのドラコニア
そして、祈る。
“ お願い…助けて ! ”
北の深海で、苦しむ人魚達を救いたい。ただその一心を、伝える。
ローズの脳内のイメージが、触れ合っている部分から どんどんユニコーンに流れ込んでいく。
しかし…
「………」
ローズが瞼を上げると、そこにユニコーンの姿はなかった。
『……っ、』
力を借りる事は、出来なかった。
自分の祈りが足りなかったのか、それとも清い乙女だとは認められなかったのか。何が原因かは分からない。
ユニコーンが、目の前から消えてしまった事だけが事実。
地面に生えている草を、両手でぎゅっと掴む。
そして、ガクっと下を向いたローズ。
と、顔を向けた下に…
光り輝く、それを見つけた。
『!!これは』
それを、丁寧に手に取ってみる。
象牙のようであり、しかしもっと神秘的で美しい。それは、ユニコーンの角であった。
ローズはそれをぎゅっと胸に抱きしめると、心の中で何度も何度も、ユニコーンにお礼を言うのだった。
「ほう。願いの物は、手に入ったと見える」
『うん。なんとか…、力を貸してくれるみたい。
マレウスも、本当にありがとう。貴方がいなければ、ここに来る事すら出来なかった』
マレウスは、ゆるりと首を振る。
そして ここへ来た時と同じく、またローズの瞳をその手で覆い隠すのだった。