第3章 暗躍する確固たる悪意
オクタヴィネル国の3人が帰ってから、ディアソムニア城内は殺伐とした空気に包まれていた。
オーロラがいくら両親に理由を聞いても、2人は一切口を開かなかった。
母は彼女をきつく抱き締めるだけだったし、国王である父は
軍の大将や指揮官、大臣などの重役と共に会議室にこもってしまった。
手を伸ばせば、すぐそこに会議室への扉があるというのに。
オーロラは、入る事をきつく禁じられていた。
その中では当然、現在進行形で会議が行われていた。
「国王陛下!だから私は以前から申しておったのです!
今からでも遅くありません!
茨の谷に軍を派遣致しましょう!」
鼻息を荒くするのは、ディアソムニア国軍を任されている大将。
椅子から立ち上がってステファン王に自分の意見を訴え続ける。
「たしかに…マレウス・ドラコニアが、オーロラ姫様の命を狙っていると分かったからには…
こちらから奴を討つ為、先手を打った方が良いかもしれないな」
大臣も、大将の意見に同意した。
「……」
国王は、悩ましげに髭を撫で付けた。
言わずもがな。
オクタヴィネル国の使者、アズールがこの混乱を持ち込んだのだ。
彼は国王にこう話した。
“ これは私が独自のルートで仕入れた情報なのですが…
貴国の最果てに住む、マレウス・ドラコニアが
ご子女、オーロラ姫様のお命を狙っているかもしれません。
私の部下が、何度もこの城に足を運ぶ彼を目撃しています。
マレウスは、世界屈指の大魔法士。
勿論我が国も、その存在を警戒しておりました。
不躾とは存じながら、マレウスの城に見張りを置いておりました。
勝手な事を致しまして、申し訳ございません。
…しかし、それが功を奏しました。
大切なオーロラ姫様の御身に、危険が及んでいると知る事が出来たのですから ”
勿論こんな事は、アズールの口から出まかせである。
彼は、ディアソムニア王族と、マレウスを憎しみ合わせ
潰し合いをさせたかったのだ。
そして、あわよくば彼等が共倒れしてくれる事を願っていた…。