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眠り姫の物語【ツイステ】

第3章 暗躍する確固たる悪意



フロイドのキスは彼女に届きはしなかったが、

少なくともフィリップやアズールに彼が殺される事もなくなった。

とりあえず、今はそれで良しとしたのだった。


「お姫様は、ヘドが出るほどお優しいんだねー。

じゃあ代わりに俺も…ちょ〜っと優しさ見せちゃおうかな?


もしこれから君が、死ぬほど辛い目にあった時

俺に助けて〜って縋って頼むならぁ…

オレがお姫様を、助けてあげてもいいよ?」

フロイドの申し出に、耳を傾けるオーロラ。

しかし彼女はノータイムで断言した。

『私が貴方に、縋って頼む?
ふふ。ありえないわね。クソくらえだわ』

「クチわりー」

『何か、言った?』

「べっつに〜、何も言ってないでぇす」


彼の前では強がっているオーロラだったが。

実は足は小刻みに震え、全身にはうっすらと汗をかいていた。

立っているのが辛かった彼女は、その背中をすぐ後ろにあるガーゴイルに預けた。

それを見ていたフロイドは、質問をする。

「さっきから気になってたんだけどー。

その怖〜い置物、何?」

彼はガーゴイルを見つめて言った。

オーロラは、それに優しく手をついて答えてやる。

『私も…詳しくは聞かされていないの。

城の皆んなは邪魔扱いしてるんだけれど、私は…

なんだか嫌いになれなくて』

恐々としたドラゴンのガーゴイルを、愛おしそうに姫が見つめるその光景はなんだかちぐはぐだった。

しかし、フロイドには彼女の思いが伝わった。

「…ふぅん、じゃあ、この置物は

お姫様の宝物だ?♪」

宝物。その単語は彼女の胸にすとんと落ちた。

『そうね…宝物…か。

うん!そうみたい。このガーゴイルは私の宝物ね。ふふ』

幸せそうに笑う彼女を見てから、改めてフロイドはガーゴイルを見上げた。

「…へぇ〜。そっか。お姫様の大切な物、ね」

彼がにやりと唇を歪めると、またも意地悪そうな尖った歯が覗いたのだった。
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