第16章 運命とガラスの靴
『…ジェイド、背 高過ぎるわね』
なんとか肩へと手を乗せるローズ。190センチ近い男と踊るには、彼女の背は低い。
「距離が遠いからでは?」
ジェイドは遠慮なく、彼女の腰をぐっと自分へ引き寄せる。
『まぁ、少しは…楽になったかしら。いやでも、それにしてもまだ腕が辛い…』
「これ以上 僕にどうしろと仰るのでしょう」
ジェイドは、タン とステップを踏み出した。それにすぐにローズも合わせる。
『…うーん、そうね…。頭削るとか?』
「普通、削るとしたら足の方では?」
会場の視線が、徐々に2人に集まる。それくらい彼女達のダンスは素晴らしかった。
『…ジェイド、上手いわね』
「お姫様にお褒め頂き、光栄です」
激しいアクションの中でも、常に美しい姿勢を維持している。さらには 踊りやすいバランスに彼女の事を導くジェイド。
カウントどおりに踊るのではなく、音楽の抑揚をとらえて、速さ、緩急、テンポを変化させて踊るのが好きなローズのダンス。見ている分には美しく楽しいのだが、それに合わせるとなれば話は別だ。
そんなアドリブ的な動きにジェイドは的確に合わせてフォローする。
「まぁ…あのお2人…とても素敵ね」
「本当だ。どこの貴族だろうか」
「あの紳士はどなたかしら…背が高くて、笑顔が優しそうで素敵…。その上、あんなにもダンスがお上手なんて…」
「いや、あのダンスを型作っているのは あの女性の方だよ。なんと見事で華麗な…」
周りで踊っていた人間ですら、2人を見る為に その足を止める。自然とフロアで踊っているのは ジェイドとローズだけとなる。
するとやがて…その姿は王子の目にもとまる。