第16章 運命とガラスの靴
ガタゴトと、馬車は着実に2人を城へと運ぶ。
「…ねずみが運転する馬車に乗る機会など、もう金輪際無いでしょうね」
『ジェイド、元も子もない言い方やめて。いま運転してくれてるのは、御者さんよ。御者さん』
どうも彼は、現実的な考えを持ち合わせているもよう。しかしローズはどちらかというとロマンティスト。夢見がちだ。
いま馬車を運転しているのが、ネズミか。はたまた御者か。ジェイドは前者を。ローズは後者と捉える。
このそれぞれの思考は、魔法使いの言葉ひとつをとっても 2人の考え方を大きく分かつ。
『 “ 運命 ” かぁ。例えどんな障害があっても、恋に落ちる “ 運命 ” なんて。
とても素敵だと思わない?ジェイド』
魔法使いから受け取った片方のガラスの靴を見つめて、彼女はうっとりと呟く。
「…そうでしょうか。…運命なんて退屈で仕方ない」
『退屈?』
ジェイドの言葉に、ローズは顔を上げる。
「だってそうでしょう。初めから導かれる結果が定まっているなど。こんなにつまらない事はありません」
ローズは思う。やはりジェイドは、あのフロイドと 紛う事なき双子なのだと。
物腰は正反対だが…、根っこのところはそっくりである。
退屈が大嫌い。楽しい事やイレギュラーが大好き。根本は2人とも同じなのだ。
『…ジェイド ちょっと待って。導かれる結果が決まってる?退屈?それは間違ってると、思う。
いい?運命っていうのは…』
彼女が私論を語っていると、ふと馬車が走る事をやめた。
そう。それは、城に到着した事を示していた。