第14章 我儘になりたいクイーン
綺麗に整えられた芝生の上をローズが歩くと、サクサクと音が鳴る。
足の裏に伝わってくる その小気味好い感覚と 音を聞きながら、彼女は歩みを進める。
やがて、リドル後ろ姿を捉えた。
彼女が声を掛けるより早く、その存在に気が付いたリドルが ゆっくりとこちらを振り返った。
「…呼び出して すまないね」
申し訳無さそうに小首を傾げて微笑むリドルは、いつもよりも緊張した面持ちだ。
『ううん。お待たせ』
今日もここ。ハーツラビュルの薔薇園には 美しく咲き誇る大輪の薔薇。
赤。白。そして塗られた赤。その全てが言うまでもなく見事なのだが。
リドルの瞳には、その薔薇達がさらに美しく映っている事だろう。
何故なら、彼は今日 自分自身の頑張りで 自由を手に入れたから。
そして、目の前には愛しい人。
まさに世界は薔薇色だ。
今ならば自分は、何だって出来る。不可能なんてない。いわば最高の心持ちだ。
「まずは、キミに礼が言いたい。
ボクを手助けしてくれて、本当にありがとう。心の底から 感謝している」
『……』
リドルとしっかりと向き合い、ローズは言葉は出さずに 首をゆっくりと横に振った。
「…ローズに情け無い姿を見られてしまったけれど。正真正銘、あの姿が昨日までのボクだった」
でも、今は違う。
「キミが側にいる。それだけで、ボクは強くなれた。
…誰かを想う心が、ボクを強くしたんだ。ボクにこんな力があるんて…。勉強だけでは分からない事があるんだね」
リドルは心の奥から滲み出たような、そんな笑顔を浮かべて言葉を紡ぐ。