第14章 我儘になりたいクイーン
ローズ、リドル、トレイにデュース。そしてフロイドの5人は 城の出口に向かって歩いている。
今度は小さな裏門などではなく、れっきとした正面玄関を通る。
外に出るなり、フロイドは大きく伸びをして言う。
「んーー…っ。じゃあ俺帰るねぇ。ばいば〜い」
彼はここから直接オクタヴィネルに帰るのだろう。
足早に去ろうとする彼の背中を、ローズは追い掛ける。
『待ってフロイド!あの…色々と、本当にありがとう。貴方には とても助けられた…。
また当分会えないかもしれないけど…私待ってるから。あの家で。だから…きっとまた遊びに来てね』
本来なら、あの取り引きは 彼女をここまで連れて来れば成立していたのだ。
それをわざわざ、リドルの元まで届けてくれた。ローズはそんな彼の優しさで 胸がいっぱいだった。
同時に、彼と別れる寂しさがある事もまた事実。
「…なぁにお姫様、オレに惚れちゃった〜?」
両手をポケットに突っ込み、腰を曲げて顔を近づけてくるフロイド。
『……多分、違うと思う』
「!」
フロイドの予想では、もっと明確に拒絶されると思った。キッパリと否定される事はなかったのだ。
なんだか自分でもよく分からなくて、彼は言うつもりのなかった言葉を彼女に送る事にした。
「……俺ってば自分が嘘つきだからさー、嘘ついてる奴が 分かんの」
『…え?何?』
フロイドの言葉はいつも唐突で、頭が追い付かない。
「良い事おしえてあげる〜♫カニちゃんはねぇ、何か嘘をついてるよ」
『……エースが?』
エースは、フロイドの事を見て…オクタヴィネルの参謀だと言った。デュースからそう聞いていると。
しかしデュースがそんな事を知るはずはないのだ。オクタヴィネルでは、フロイドは王子の付き人という立場で通している。
フロイドが参謀だと知っているのは、オクタヴィネルのごく一部の王族と、あとは…アズールと、ジェイドだけなのだ。