第2章 オッドアイを保有する兄弟
「あの兄弟は、ある男と突然城に現れた」
『ある男?』
「アズール・アーシェンロットという男だ」
勿論そのような男の名など、オーロラは聞いた事なかったが。
フィリップの話の続きに、出来る限り真剣に耳を傾ける。
「俺よりも年下だってのにあいつら…知恵と圧倒的な魔法力を駆使して、あっという間に他国の領土を奪ってみせた。
それに感服した親父は、今やアズールの言いなりだ。
情けない話だが…今オクタヴィネルを動かしてんのは、実質アズールだ。国王はもはやただの飾りだよ」
オーロラは驚愕した。
まさか隣国の情勢がそこまで劇的に変化していた事に。
「さっき…この話は、この国にも関係してくるかもって言ったな。
おそらくアズールが次に狙ってるのは…ここ、ディアソムニアだ」
鋭く射抜くような視線を投げかけられて、オーロラの背中に嫌な汗が流れた。
『そん、な…どうしよう…すぐに、お父様とお母様に話さなくちゃ!』
「無理だ。俺達子供が何を言ったところで、信じてもらえない」
『じゃあ、私達には何も出来る事はないっていうの?
自分の国が襲われるかもしれないと言うのに!』
「…まぁ、そうなるな」
オーロラの瞳は、絶望の色に揺れていた。
そんな彼女を安心させるように、フィリップはその震える手をギュっと握った。
「でも、何も出来ないのは…現時点での話だ。
あと6年。あと6年経てば…
俺は21で、お前は16になる。
そしたら俺と結婚しろ。
俺とお前が結婚すれば、オクタヴィネルとディアソムニアは1つの大国となる。
そうなれば、俺は絶対に政権を勝ち取って国王になる。
立派な国王になって、その大国をまとめ上げてみせるから…」
オーロラの手を握る手に、ぎゅっと力が込められた。