第2章 オッドアイを保有する兄弟
オーロラは、裸足で草の上を駆けた。
弾む息と、ドキドキとした心臓を落ち付けようと。ある大木の後ろ側にくるりと回り込んだ。
そして太い幹にそのまま背を預ける。
ここなら、フィリップからは死角だ。周りには似たような木々がたくさんあった。
しばらくは隠れていられるだろう。
『…ふふ』
彼女は、フィリップが自分の事を探し回る姿を想像して笑みをこぼす。
「お姫様、見つけたぁ」
『!!
びっくりした、フロイドじゃない…』
彼は何故かオーロラが隠れている場所に現れた。
その綺麗な造形の顔を傾けて、彼女を覗き込む。
『もう!鬼はフィリップでしょう?
フロイドは隠れていないといけないじゃない』
「うんうん。だからぁ、ここに一緒に隠れよ?」
そう言うと彼は、幹に右手をついた。
オーロラとフロイドの距離がぐっと縮まる。
『…フロイド、近い。
貴方はどこか違うところに隠れ』
彼女が言い終わらない内に、フロイドの左手の指が唇に優しく触れた。
「しー。ほらぁ、王子様がオレ達の事探し始めたから。
静かにしようね?」
たしかに彼女達の向こう側では、2人を探し始めるフィリップの気配がした。
『…仕方ない、かな』もう動けないし
今さら他の隠れ場所に移動する事も出来ないので、仕方なく彼女達は1本の木の陰に2人で身を寄せ合って隠れる。
しかしその間、オーロラが違和感を感じるくらいに
フロイドは彼女との距離を詰めて来た。
「アハッ、お姫様は可愛いなぁ…」
そう言って、オーロラの髪をひと束掬い上げた。
『……』
オーロラには、どうして彼がこんな事をするのか分からなかった。
どういう考えがあって、今こうしているのか理解しようと努めた。
そんな中、フロイドの顔がゆっくりと近付いて来た。