第11章 菓子より甘いはクローバー
「ローズは、ずっと俺の作る菓子を食べてればいいだろ?
もっと俺が作るケーキを好きになって、依存して…
俺無しじゃ生きていけなくなればいい」
体がピッタリとくっつくほどの至近距離で、ローズの事を見下ろすトレイ。
彼と視線を合わせる為、首が痛くなるくらい上を向く。
彼女を見下ろすトレイの瞳は、ハッとするくらい綺麗なイエローゴールド。
…彼とこんなにも長く、深く見つめ合うのはどれくらいぶりだろうか。
自分に迫る大男に恐怖する事も忘れて、ローズはそんな事を思った。
「…なんてな。冗談だよ」
トレイは軽く言うと、くるりと体を半回転させ。ローズに背を向けた。
『ん、…知ってる。
ほ、ほんとにトレイはいつも、冗談ばっかりなんだから!あはは』
なんとか取り繕いはしたが、ローズの心臓は いつもよりも少し早いリズムを刻んでいた。
それに手を当てて、早く治まれ。とローズは心の中で唱えた。
「…冗談ばっかり、か。
いつのまにか俺が言う事には、信憑性が無くなって来てるらしいな」
『そ、そうよ!なんだかトレイの言う事は、本気なのか冗談なのか分かりにくいのよね』
ローズの言葉を聞いて、トレイは顎に手をやって呟く。
「そうか、それはまずいな。気を付ける」
『ふふ、そうね』
「…いつか、俺がローズに好きだと伝えた時に
冗談の一言で片付けられたら、たまらないからな」
独り言のように口の中で、トレイは言った。