第2章 オッドアイを保有する兄弟
ジェイドの挨拶が一通り終わると、今度はフィリップが口を開いた。
「ステファン王、リア王妃。オーロラをお借りしても?」
「勿論ですよ。お部屋で遊んでいらっしゃい」
王妃は優しく微笑んだ。
「行こうぜ」
フィリップはオーロラに手を伸ばす。
彼女は当然のように彼の手を取り、共に謁見室を後にしようと歩き出す。
しかし、彼のお付きのはずのリーチ兄弟は王の前から動かなかった。
フィリップについて来ない従者を、オーロラは不思議に思って振り返る。
するとジェイドは目を細めた。
「僕はステファン王に、大切なお話があります。
お2人のお世話は貴方に任せますよ。フロイド」
「はぁい。了解♪」
ジェイドに仕事を任されたフロイドは、意気揚々と2人の後に続くのだった。
「あれぇ?ねぇねぇ、たしかさっき、お部屋で遊びなさいって言われなかった?」
迷い無く中庭に出る2人に対して、フロイドは楽しそうに言った。
そんな彼を無視してフィリップとオーロラは、白花が点々と咲く芝生の上に座り込む。
「俺達はいつも外で会ってる。部屋の中じゃ大人の目があって息がつまるからな」
『ここが1番緑も風も気持ち良いの。
ほら、フロイドも座って』
「なるほどね〜」
フロイドも、2人の隣に座り込んだ。彼が腰を下ろすと、地面の草花が軽い音を立てた。
『部屋に閉じこもっているより、外の方が楽しいしね』
「…いいねぇ。オレも楽しいのは大好きー」
彼女の言葉にフロイドは、にたぁと口元に薄ら笑いを浮かべた。
オーロラは、ドレスが土で汚れる事を気にも留めず。青々と生い茂る草の上に足を放り出す。
隣で気持ち良さそうに寝転ぶフィリップは、そんな彼女をたしなめた。
「お前なぁ…ちょっとはお姫様らしくしろよ。
せっかくのドレス汚れるって」
フィリップのミルクティー色の髪を、そよぐ風が揺らした。
『むぅ…そんな事言ったらフィリップだって!
もっと王子様らしい口調で、お話しあそばせ?』
おちゃらけた口調で、彼女も負けじと幼き王子に駄目出しをするのだった。