第2章 オッドアイを保有する兄弟
幼い彼女なりに、オクタヴィネルをイメージしたドレスを選んだつもりだった。
キラキラと光の粒を集めたようなそのマーメイドドレスは、さながら海を滑る波のように、彼女の目には映ったのだ。
「貴女が選んだ物だもの。きっとフィリップ王子も褒めてくれるわね」
『うん!』
彼女は満足気に返事をしてから、苦手なコルセットと格闘が始まった。
オーロラは、父と母と共に謁見室でフィリップを待っていた。
すると間も無く、信じられないくらいに背の高い扉が。ゆっくりと開いた。
『フィリップ!』
彼女は許嫁の名を呼ぶと、椅子からピョンと立ち上がって。彼の元へ駆け寄ろうとしたが
ドレスを着て走らない。という母の心の声が聞こえた気がして、すぐに姿勢を正した。
「っくく…今日は犬みてーに走ってこねーのかよ」
フィリップはそんな彼女を見て、嫌味ったらしく笑みをこぼした。
笑われてしまったオーロラは、その白桃を思わせる滑らかな頬を膨らませた。
「よく来てくれたフィリップ。
おや、初めて見る従者だな。紹介してくれないか?」
すると。片膝をつき、こうべを垂れていた2人の少年が顔を上げた。
オーロラはそんな2人を観察する。
まず最初に驚いたのは、瓜二つのその見た目。
彼等が双子であると一目で分かる。
年の頃は自分と同じくらいだろうと推測。
海のような透き通った薄青色の髪。黒のメッシュがまた印象的。
そして…見つめているとどきりとしてしまうようなオッドアイ。黄金に輝く片目が鋭く光る。
王に挨拶をする双子の片割れ。
「お初にお目にかかります。
私達はこの度、フィリップ王子のお世話係に任命されました…
ジェイド・リーチと」
「フロイド・リーチでぇす」
真面目に挨拶を続けているジェイド。
しかし片割れのフロイドは、硬い挨拶など相方に任せて。
自分を観察するオーロラの方に顔を向けた。
『!!』
突然こちらに視線を向けられ、息を飲むオーロラ。
そんな彼女に、彼は唇を引き歪め意味ありげに笑った。
口元から覗いたギザギザの歯が、オーロラの心を不安にさせた。