第8章 なんでもある日のパーティ
完全に手を止めて、自分の事を見つめる視線が気になったローズは。目の前の男の名を呼んだ。
デュースは弾かれるように現実へと帰って来た。
『大丈夫?ぼーっとしてたけど…ペンキの匂いにでも酔った?』
「い、いや。大丈夫だ!なんでもない」
自分の事を覗き込む その整った顔を、今度は直視出来なかった。
『そう?無理しないでね。2人でこれだけやって やっと半分だもの。デュースも疲れちゃうわよね』
「…半分…」
そう。これでノルマは終わったのだ。
ローズが次の白薔薇に手を伸ばそうとして、デュースはそれを制する。
「あ、ローズ。今日はこれだけでいいんだ。
塗るのは半分でいい」
『そうなの?』
「あぁ。今日は、ローズを仲間に迎える為のお茶会だからな。
新しい仲間を迎える時の薔薇飾りは、赤と白交互に…って決まりがある」
デュースの教えた後に ローズは、テーブルいっぱいの薔薇を見つめて言う。
『…じゃあ 私の為にこんなに沢山の薔薇を用意して、赤くしてくれたのね…
なんだか本当に歓迎されてるみたいで、嬉しい!
ありがとう。デュース』
「!!///」
どれだけ薔薇を多く集めたって、ローズのこの笑顔には敵わない。
そんなフレーズが自然に頭に浮かんだ自分にデュースは驚いた。
『じゃあもうここは大丈夫ね。
次はリドルのお手伝いに行ってくる。また後でね、デュース』
「あ、ありがとうな。助かった!」
自分の名を呼んで、ここを去って行く彼女の後ろ姿を見送る。
テーブルの上から溢れんばかりの数多の薔薇。
彼女が手伝ってくれる前まで、こんな事は面倒で 無駄な作業だと思っていたのに。
ローズと向かい合って、同じ作業をしている内に…自分の中でこれが特別な行程に変わってしまった。
「…誰が決めたんだ。
新しい仲間を迎える茶会には、薔薇は赤白交互に飾れ なんて。
絶対に、全部真っ赤の方が良いに決まってるのに」