第8章 なんでもある日のパーティ
デュースは、白薔薇と向かい合っていた。
大輪を手に持って、その花弁1枚1枚を丁寧に赤く着色していく。
勿論これは、今日のお茶会にて飾るためのもの。リドルの指示で彼が白薔薇を赤く塗っているのだ。
いつもなら、全ての薔薇を赤く染め上げるのだが。今日は違う。
赤くするのは半分。
誰が決めたか知らないが、新しい仲間を迎える為の薔薇飾りは 赤と白を交互に並べる。これが決まりだった。
だから、今日染め上げるのは半分なのだ。
デュースは思った。毎回の茶会が、新しい仲間を迎え入れる為のものなら良いのに と。
なぜなら、面倒なこの色塗り作業が 毎回半分で済むのだから。
「…だいたい、何故 最初から赤い薔薇を植えないんだ。僕にはこの作業が無駄じゃないとは思えない…」
リドルやトレイが近くに居ないのを分かっていた彼は、つい1人愚痴をこぼした。
しかし、彼はもう1人の存在が近くにいる事を失念していた。
『また薔薇を塗っているのね。私もやっていい?』
「!!」
突如 背中から声をかけられて、デュースは肩をビクっと震わせた。
その間にも、彼女はテーブルの上に置かれたもう1本の筆を その手に取った。
面倒な作業を手伝うと言ってくれるローズ。願ってもない。
「ありがとう!助かる」
既に向かいの席に座っている彼女に、彼は礼を言った。
『ふふ、1人でこれだけの薔薇を塗るのは大変だものね。
でも意外だわ。昨日も思ったのだけど、こういうのって魔法でちゃちゃっと塗ってしまわないのね』
彼女は筆を左右に振って言った。
おそらくマジカルペンで魔法を使う真似事をしたつもりなのであろう。