第7章 真実の愛を見付ける為に
「さすがリドル様、巧妙な作戦ですね!」
デュースも、まさかここまで近くに隠れ住むとは知らなかった様子。心の底から感心したようにリドルに言った。
しかし、褒められた本人は喜ぶどころか。真剣な顔でデュースに詰め寄った。
「デュース。ボク達は今日から、ここに隠れ住むんだよ?分かっているのかい?
勿論、身分も隠さなくちゃ意味がない」
『たしかに! “様” なんて敬称を付けて呼んでいれば、リドルの身分がバレてしまうかもしれないわね』
ローズの言葉に、リドルは黙って頷いた。
「そ、それじゃ、一体なんと呼べば…」
リドルに見つめられながら、彼は頭を抱える。
『デュース!頑張って!』
懸命に、リドルの新しい呼び名を考えるデュース。それを見て、応援などを始めるローズ。
普通に “さん” 付けで良いではないか。と、まともな事を言える人間は不在だった。
そんなお馬鹿な会話が繰り広げられているなど知らないトレイが、馬車の中を覗き込む。
停車したにも関わらず、なかなか降りてこない3人に痺れを切らしのだ。
「ほら、着いたぞ。一体何して…」
トレイの声かけを遮るように、デュースは渾身の回答を叫ぶ。
「リドルの兄貴!!」
「待て待て。本当に何があったデュース、おい」
トレイは、本気で心配そうな目をデュースに向けた。
そんな困惑したトレイを無視するかのように、リドルは言い放つ。
「…フッ。悪くない」
「いや悪いから。なんなの兄貴って。お前はどこぞヤンキーなのか?」
満足気なリドルとデュースに、忙しく突っ込むトレイ。
助けを求めるかのようにローズの方をチラリと見た。
そんな視線に気付いた彼女は、深く考えるそぶりは見せず軽く感想を口にする。
『んー、兄貴も悪くないけど…。
先輩。とかは?いいわよねぇ…私憧れちゃう!
“ 先輩!あの夕日に向かって一緒に走りましょう! ” とか、
“ 先輩!どっちがかけっこ早いか競争しましょう! ”とか!
私も、いつか言ってみたいわ…』
「…なぁローズ、もしかしてそのアホな台詞は僕が言っているのか?」
「どうでもいいが、走ってばっかりだな」
リドルは黙って、自分とデュースが夕日に向かって駆けている姿を想像していた。